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海客

 十二国記。 十数年ぶりにまともに最初から読み返している。 好きな巻や箇所は定期的に読み返してはいたが、『月の影 影の海』から通しでとなるとやはり十年ぶり以上。 ただいま帰りました、という言葉以外見つからなくて胸がいっぱいだ。 私は胎果なんておこがましいことは言えないただの海客だけれど(海客すらおこがましいただの蓬莱の人間かもしれない)、胎果みたいな気分で「ただいま」と言いたい気持

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人の善意

 前に一度、警察から電話がかかってきたことがある。 警察にいって調書をとってもらったこともあるし、110番を何度もかけたこともあったが、自分の電話に間接的に、「有永を警察が探している」 という連絡がくるのは初めてだった。 かかりつけの病院からだった。 ついに私は自分のあずかりしらぬところで無意識に悪いことをしてしまったようだった。 頭が真っ白になって、

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帽子の呪い

 帽子を買った。 ハット、の方。 子供の頃誰かに言われたのだ。「お前は帽子が似合わない。頭が大きいからね」 そうなのか、と思った。 私は一生帽子はかぶらないですましておこう、死ぬもんでもないしな、と思った。  友達の帽子をひょいととってかぶってみせるなんてことはあったけど、それはちょっとしたコミュニケーションの一環で「頭が大きい私が帽子をかぶってみた」という

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ほめことば

 動物を前にすると褒め言葉が止められなくなる。 しかも無意味な褒め言葉ばかり出てしまう。 今回はジャーナルの趣旨をかえて(?)うちの老犬ダックスとらさん(仮名)を前にした褒め言葉を集めてみた。 気持ち悪い言葉遣いなので私への夢を壊したくないよ、なんか気分がのらないよ、って方は読まないでほしい。(動物飼いの方は理解してくれ) ●気持ち悪い語りかけ系

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少年の文化

 たまに夢に出てくる子がいる。 小学1年生の少年。 後ろ頭が丸くて、目が時折きらりと光り、絵本が大好きで、クッキーの空き缶にビー玉や遊戯王カードをそっと隠すように集めている。 私は大学時代、彼の家庭教師をしていた。 両親は有名大出のエリート(自称)。 私は彼の両親との初対面で、「あ、見下されているな」 と感じた。 私の大学はその両親の大学と双璧のような呼び方をされる