アイドルマスターに入学した

「好き」
 という気持ちが小さい頃あまりわからなかった。
 特に女の子がたくさん出てくるコンテンツへの「好き」の意味がわからなかった。
 文字通り「意味がわからない」のである。
 色とりどりの女の子たちに囲まれて、宝物のような扱いを受ける意味がただただわからなかったのだ。
「それされたから何なの……? うちの庭に油田見つかる……??」
 という気持ちにしかならなかった。

 私は偏見のかたまりで偏見でしかできていないので、おそらく帰国したばかりのころは、
「はいはいハーレムだね、カタログだね。都合のよい欲望の投影だね。みんなに優しくされる願望が叶ってよかったね」
 とさして触れたこともないメディア全てを、あまりにも一辺倒で暴力的な言葉で片付けて分かった気になっていた。
 バカかよ。
 のり子にブレーンバスターでもキメられて失神したほうがいい(※アイドルマスターミリオンライブにはプロレス大好きアイドル福田のり子がいる)。

 そしてここで登場、アイドルマスター ミリオンライブシアターデイズ
 52人のアイドルたちの成長とひたむきな輝きを応援していくリズムゲームだ。
「52人? 多いね、美少女カタログゲームだね」
 そう思ったかたもいらっしゃるでしょう。昔の私です。渡辺みのりにシメてもらわないと(※アイドルマスターSideMという男性アイドルゲームには元ヤンドルオタ渡辺みのりがいる)。
 まだ1年半と短いP(プロデューサー。ユーザーの呼称)だけれども、アイドルマスターは私の世界を変えた。

 まず女の子がたくさんいて本当にかわいい。
 52人全員かわいい。
 真実、かわいい。
 メールとかきてかわいい。「唐揚げにレモンかけてますか?」とか聞いてくる(かけてる!)。
 ライブしてる姿に名前をつけるとしたら「輝き」以外ないくらいかわいい。
 事実として、もうれつにかわいい。

 あたりまえ体操。
 でも、革命だった。
 女の子たちに囲まれるのが嬉しいのではない。
 彼女たちが上を向いてひたむきに進んでいくのを、私も少し離れたところから応援できるような気持ちになれることが心から嬉しい。それが本当にかわいらしい。
 愛しくて尊敬できてたっとくて守りたくて守ってもらいたくて弱くて強くてかっこよくて輝いている。
 それをひっくるめてかわいいと呼ぶ。

 そもそも彼女たちは個々にPに好意・厚意は示せど、あまり「囲んで」こない。彼女たちは大体Pの前で自分たちだけではしゃいだり、ぶつかったり、悩んだり、努力したりしている。Pはそれを基本的には見つめるスタンスをとっており、時折助言をするにとどまる。まだPSP版しかプレイしたことはない新参者で申し訳ないが、一対一の二人三脚で上を目指していくシステムにおいても、Pはアイドルを手伝い話を聞く役におおむね徹しているように思えた。アニメも同じだ。(媒体によって例外もあるがとりあえず割愛)

 あくまでもアイドルたちの目指す場所はPではなく輝くステージの上なのだ。
 そしてPが目指すのも、アイドルたちがそれぞれの輝き方をする最高のステージだ。
 互いを見つめるわけではなく、同じきらめきを見つめている。きらめきをみんなで囲んでいる。
 穏やかな初夏のキャンプファイアーのように。
 その火に薪をくべつづけるのがPの仕事だ。

「女の子がたくさんいる作品に、私はこう向き合っていけばいいんだ」
 私は数十年わからなかったことを、アイドルマスターと出会って1週間で理解した。

(もちろん異性として意識して接してくる子もいるが、私が女性Pなのもあってか「ハハハかわいいやつめ」という気持ちであしらうのがまた楽しい。ミキちゃんとか翼とか莉緒さんとか。未成年組はともかく、成人済みの莉緒さんなんであんなにポンコツなんだろう愛しい。ミリシタALIVEイベントの莉緒さんとの会話は何度見返しても泣いてしまう。Pはいつでも力になるからね……)

 現実にいる女の子アイドルグループが好きな女の子たちの気持ちもずっとわからなかった。
 何が好きなんだろう、と純粋にわからなかった。
 楽曲だろうか、ファッションだろうか、ダンスだろうか、キャラクターだろうか、それとも……?
 色々な「好き」のなり方がある。単純に歌が好きという人もいれば、同性が同性アイドルを恋愛感情として好きという人もきっといる。
 私がアイドルマスターから教えてもらえた「好き」のなり方は、多くのバリエーションの中のちっぽけなひとつだろう。けれど「好きになり方」と「好きになった気持ち」を知ることができたのは私にとっては革命であり自由だった。
 アイドルや芸能人やその他の同じ類のものが好きな人を
「どういう道順かはわからないけれど、何か”ピースがハマった瞬間”があって、大好きなのだろう」
 と想像できるようになったことは私にとって「庭に油田が見つかること」より喜びだった(いや、油田もほしいけど)。

 自分が思いもつかなかった新しいものを好きになると、「それに似たものを好きな人の気持ち」が自分なりに分かるようになる。
「都合のいいコンテンツ」
「美少女/イケメンカタログ」
 と切り捨てるのは簡単だ。なんとなくわかったふりもできるし、ピンとこない(これない)自分を隠すのにももってこいだ。
 当然世の中にあふれるものたちの中には、憤りを感じる表現があるときもある。
 人を傷つけない表現などないというけれど、悪意あって傷つけるために作られるものもないわけではなく、決して全てを好きになることは難しい。
 抗議の声をあげる必要があることもあるかもしれない。
 けれど各々が個人的に抱える「これが好き」という気持ちそのものは、作品表現とは切り離して、「お前はおかしい」と頭ごなしに否定されるものではないと思う。
 別に一緒に好きにならなくても、「この人はどういうわけか好きなんだ」とシンプルに想像するだけでいい。
 みんなのそれぞれの「好き」が否定されることなく、誰かの想像力によってそっと咲き続けられますようにと最近願っている。

 まだ「好き」に出会ってないよ、という方はこれから出会える無限の世界が広がっているという意味でもあるので、それもそれでとんでもない幸運なのだと思う。
 無理をして探すこともない。
 ある日突然穴にストンと落ちてしまうけど、足はくじかない。怪我もしない。傷つかない。落ちた穴の先は地球の裏側だから、新しい空があって新しい風景がある。
 だから大丈夫。
『努力はおしまない ダイスキは裏切らない』
 ってアイドルマスターも言ってるし。


P.S.
 ここからはダイレクトマーケティングなのですが。
 アイドルマスター ミリオンライブシアターデイズというスマホゲームには「歌い分け」というシステムがある。
 5人好きな子をユニットで組ませてライブをしてもらうと、その子達が配置された場所にしたがった歌割りで歌ってくれる。
 つまり52人の中から好きなアイドルたちで固めたユニットで、自分だけのオリジナル音源が作れるのだ。
 お姉さん声で編成すればユニゾンもお姉さんに、年少組で固めればユニゾンはかわいく丸くなる。
 びっくり。天才。大天才。
 驚くことに3億通り以上の組み合わせがあるようで、そのような曲が今5曲も実装されている(メインストーリーを進めると増えていく)。死ぬまでに見きることは不可能だ。


 落ち着いてこの動画を見てほしい(私が落ち着いていない)。
 この動画の13人は52人の中から無作為(?)に選ばれた13人で、当然あなたが別の子を選べば声質や歌うパート、カメラワークなども変わる。
 すなわち無限。
 天才すぎん?
 天才。こまった。なにこれ。未来じゃん。
 もちろん5人ライブに変更することも可。
 そして1stアニバーサリー曲の『UNION!!』は名曲。
 リズムゲーモードだとセンターの子に特別な言葉をもらってしまう。泣いちゃう。

 そして突然始まる自作自演FAQ。
 白々しいのでみんな読んでくれよな。

Q. ゲームが苦手。リズムゲームもしたことない。
A. 私も! マリオカート体かたむいちゃうタイプ。
 ほとんどゲームをしたことがなかった私が突然始めて「こんなに色々な意味で優しくて楽しくていいの……?」と驚いてしまったのがミリシタ。
 リズムゲームは難しかったら簡単なレベルだけやっていればオッケー!
 一日のちょっとした時間にぱぱっとできる(進研ゼミか?)。
 課金課金課金! みたいな疲れる感じ一度も感じたことない。ほかのソシャゲをあまり知らないからなんともなんですが。
 ホーム画面でもフルボイス・フル3Dなので、ぼんやり眺めてるだけでも物凄く楽しいよ。
 あっちむいてホイとかしちゃう。

Q. 女性が始めても楽しいかなあ?
A. 思いの丈は上の記事に書きましたが、楽しみ方を見つけた方は絶対楽しい!
 かつて幼少期にきせかえごっこして遊んでいた女性P(もちろんそのほかの性別Pも!)は、最高すぎて頭へんになると思う。私はへんになってる。
 強くて自立した女性がよしとされている風潮だけど、ミリシタは王子様を待つお姫様になりたい子も、恋に恋したい子も、虫をつかまえるのが好きな子も、自分のロックを信じかっこよさを追求する子も、周りからイケメンと言われるけど本当はスカートが履きたい子も、みんなみんな肯定してくれるので、そういうところも大好きです。いろんな子がいて尊重しあってる。
 実際、お姫様になりたい子や聖母やってる子がめちゃくちゃ強くてかっこよくて可愛いので私は大好きなのです。どんどん偶像やってほしい。

Q. やっぱりゲームはできないかも……
 そしたらアニメをおすすめします。
 アニメのアイドルマスターから入っていただいて、劇場版『輝きの向こう側へ』を見ていただき、そのあとに小学館ゲッサンで連載されていた「アイドルマスターミリオンライブ」という漫画を読んでいただければと思います。
 全部名作。大名作。

Q. 女子より男子のほうに興味があるな
 同世界別シリーズの「アイドルマスターSideM(さいどえむ)」がおすすめです。アニメもあるし、スマホゲームも2つあります(初心者さんにはライブオンステージというリズムゲームがわかりやすいかな)。初めからユニットが組まれているので誰かしら好きなコンセプトのユニットがあると思います。
 センターユニットが元弁護士・医者・パイロットの高学歴&平均年齢26歳の3人組なので、時代劇とかの仕事くると「受験以来だな」とかいう会話出てくるので、もうその時点で好きってなる。
 S.E.M(せむ)という疲れてる社会人のハートぶち抜いちゃう最年長32歳の元数学教師がいるユニットもあって、とってもとっても励まされます。
 ミリシタが「生きるのがんばろう」なら、SideMは「仕事がんばろう」みたいな気持ちになる。両方大事ね。

Q. なんでシンデレラちゃんとシャニマスちゃんの話はしないの!?
 新参者ゆえシンデレラちゃん人数多すぎて勉強中&シャニマスちゃんは有栖川夏葉様のファンです! 勉強不足おはずかしい! ごめんね!

Q. ミリオンだと誰が好きなの?(これだけは実際にあった質問)
A. 迷う! みんなかわいい!
 特に、まかべ~、麗花さん、静香、志保、ジュリア、好きですね……。最近は朋花様や翼、未来ちゃんも。(選べなくない??)
 ジュリア誰と組んでもずるいな~て感じ。
 D/Zeal、CDのドラマトラックみんな聴いて!

 アイドルマスターミリオンライブシアターデイズはいつでもあなたを待っています。

更にP.S.
 私が愛してやまないアイドル、高槻やよいさん。そして天海春香さん。
 ふたりともがんばりやさんで素直でひたむきで元気でチャーミングで愛情深い人です。
 今日は名前だけ覚えて帰ってください(誰だよ)。

 高槻やよいさん、お誕生日おめでとうございます。フォーエバーラブ。